「山の懐に抱かれている幸せ。」
- 年代
- 50~60代
- 職業
- カフェ経営
- 出身・今まで住んだことのある地域
- 東京都、神奈川県
- 移住区分
- Iターン
- 家族構成
- 夫婦
移住までの経緯
神奈川と魚津の二地域居住ライフを楽しまれている磯崎さんご夫婦に、インタビューさせていたたきました。
紳一さん)
神奈川に住んでいるころ、休日になると山梨県小淵沢、八ヶ岳、長野県諏訪、蓼科、白馬などへよく出かけていました。いつかは田舎で暮らせたらという漠然とした思いはありましたが、新しい土地で暮らすということにはどちらかというと積極的ではなかったかもしれません。
僕の趣味といえば魚釣りぐらいで、生活ペースは「静」ですが、妻は多趣味で活発。「動」の人です。妻のセカンドライフはガーデニングができる広い庭のある家で…という強い想いに引っ張られ、妻が好きなガーデニングができる場所を探そうと動き始めました。
移住のきっかけ
紳一さん)
移住場所は、当初魚津にこだわっていたわけではありませんでしたが、実際場所探しを始めると、家族のことを考え、義父母もよく知っている富山(魚津)だったら理解してもらえるのではないかなど考えました。実は、妻の父が花の森・天神山ガーデンの前身「ぼたん園」を作っていたので、今まで義父の手伝いも兼ね、何度か魚津に来たことがあったんです。
ここに決めた理由の1つが、この場所から見る僧ヶ岳を中心とする山々にぐっと引き寄せられたからなんです。不思議なことに、今までは、僧ヶ岳はいつも背後にある壁みたいなものでした。山から見る海が魚津の風景、景色とインプットされていたので、ここから見る山々には驚きました。
昌子さん)
神奈川ではコンテナに寄せ植えをして楽しんでいましたが、魚津では広い土地でガーデニングができるということで、自分の好きな植物で溢れたガーデンデザインを考えていました。魚津での生活がスタートし、本格的にガーデニングを始めようとすると、いろんな問題がでてきました。
暮らし初めてから、この土地は、ガーデニングに適していないということに気づきました。水はけがあまりよくなく、つるはしで土を耕すと火花が散るほど、土の中には大きな石がたくさん埋まってたので、業者さんに整地をしてもらい、さらに10tトラック22台分の山砂を運び花壇を作りました。
花壇の周りの石積みは、主人にお願いしました。トラック2台分という大量の石積みとなったので、とても大変だったと思います。モルタルで石を固めなかったので、雨が降ると石と石の隙間から土が流れだし、ずいぶんと花壇の土が少なくなりました。ただ、こぼれ種が流れだし、石の隙間から芽を出したり、花壇の周りにも自然と植物が芽を出しはじめ、その感じがとても好きです。
魚津で暮らし始める前は、私が好きな植物(日蔭で葉っぱの色や形を楽しむコケ類や山野草など…)で作る、ガーデンデザインを考えていましたが、実際の庭には、日蔭がほとんどなく、日向ばかりで思い描いていたガーデンデザインは無理だということに気づきました。
ギビキ(ギボウシ)も本来、日蔭を好む植物ですが、日向で3年目を迎えています。耐寒性があまり強くないパンパスグラスも育っています。この土地の土の特質や環境を考えながら、僧ヶ岳をバックにした景観も損ねない土地にあったガーデニングを模索しています。なので、この土地にあった植物は何か、ローメンテナンスでいかに雰囲気よく見せるのかを考えながらガーデニングをしています。
*一輪車の寄せ植え
“のらカフェ”ガーデンからは、たくさんのアイディアを発見できます。
その中の1つが、一輪車の寄せ植え。実は、昌子さんのお母様がメダカを飼っていた一輪車だったとのこと。さびて穴があき、さすがにメダカも飼えない状態になったということで、一輪車を引き取り寄せ植えに…。さびているから、植える植物は華やかな植物にしているとのこと。さびてぼろぼろになった一輪車が素敵なインテリアになっていました。
住んでよかったこと
紳一さん、昌子さん)
窓枠が額縁となり、日々変化している風景を見ることができ幸せです。
ここに住んでいると山の懐に抱かれていることを感じ、動物や植物が生きているように、環境も生きていることに気づきます。
冬になると、辺り一面真っ白になります。雪国に住むのは初めてなので、人間のふみあとや、車のわだちをみること、雪かきさえも新鮮です。同じ方向へ続く小動物の足あとを毎朝窓から見ると、別世界に来た感じになります。
苦労したこと・していること
昌子さん)
庭の土をガーデニングに適した環境の土質に変えるときは苦労しましたが、今ではいい思い出です。
苗の買い付けに関東へ2か月に一度行っています。本当は1か月に一度行きたいところですが、距離などを考えると…。小淵沢へ日帰りで行くこともあります。富山では見かけない植物に出会えるととてもうれしいですし、お客さんも喜んでくれます。お客さんに喜んでもらえることが本当にうれしいです。
移住して驚いたこと
紳一さん、昌子さん)
近所のみなさんが、想像以上に関心を持ってくれていることに驚くと同時にとても感謝しています。距離を置かずに近所づきあいをしてくれます。
カフェのオープン日、真っ先に来てくれたのもご近所さんです。友達を連れて来てくださったり、作業中にコーヒーを注文してくれたり…。農作業中の方が、休憩中にコーヒーを飲みに来ていただいて、とてもうれしいです。
そして、果物の美味しさには本当に驚いています。お米や魚が美味しいのは分かっていたのですが、こんなに美味しい果物を食べれるだなんて思ってもいませんでした。りんご、ぶどう、桃、なし。すべて美味しく、県外へも送ります。
*のらカフェ
のらカフェの“のら”は野良仕事の野良。野良=野原。
野良仕事(農作業)中にコーヒーを飲んで休んでもらいたい。野原のようなガーデンを作りたい。そんなお二人の思いが込められた店名です。
職場仲間に豆を挽いてコーヒーを淹れると、とても喜んでくれたそうです。それが“のらカフェ”の原点。「美味しい!ありがとう!と声をかけてくださることに、とても感謝している」と紳一さん。
生活パターンの変化
移住前の生活と比較して変わったこと
昌子さん)
神奈川では、高校教員として働いていました。性格上なのかもしれませんが、社会人を迎える高校生と向き合っていると、自分の言動が本当にその子にとって良かったのか...など、家に帰っても悶々とすることが多く、不眠になることもありました。そんな時は、深夜に割りばしをもって夜盗虫の駆除をしたり、寄せ植えをしたりしてガーデニングに没頭していました。鉢植えのものですが、それをみて「きれいだね」「いつも散歩しながらみています」など言われるとうれしくなり、見てくれる人に喜んでもらえるようにとまた寄せ植えをしたりしていました。
魚津に来てからは、精神的にゆとりをもってガーデニングをしたり、洋裁をしています。たくさんの生地を眺めながら何を作ろう?と考えることにも喜びを感じています。
魚津に住み続けたいですか?
住み続けたい!と笑顔で答えてくれた磯崎さん夫婦。
自分たちの今のくらしを見て、息子さんも応援してくれることにも感謝している、とのことでした。
平成30年7月 インタビュー